化粧品は、知識と情熱さえあれば、大手メーカーに限らず個人でも作ることができます。ただし、作ったものを販売して利益を得ようとするのであれば、「薬事法」という法律的が定めるいくつかのルールを厳守しなくてはなりません。
薬事法とはどのような法律で、化粧品を製造、販売するためにはどのようなポイントをクリアする必要があるのか、詳しく解説します。
パワーストーンの広告は薬事法(薬機法)に照らし合わせるとどうなるのか?
そもそも化粧品とは?
突然ですが問題です。次の商品説明文のうち、法律的に「化粧品」として分類されているものはどれでしょう。①「この入浴剤はあせもをおさえ、疲労回復に効果を発揮します」②「このシャンプーはフケやかゆみをおさえ、毛髪にはり、こしを与えます」③「この化粧水には、メラニン色素生成をおさて日焼けによるしみ・そばかすを防ぐ効果があります」。
正解は②です。①と③は化粧品ではなく、実は「医薬部外品」といわる商品の説明文にあたるものなのです。「化粧品」とは法律のうえで、「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものを言う」と定義されています。
クリームやファンデーション、口紅、香水、マニキュアなどだけでなく、シャンプーやリンス、入浴剤、石けんなど、日常的によく使う製品の中にも化粧品は数多く存在するわけですね。ちなみに、その法律によると医薬部外品は「人体に対する作用が緩和なもので、機械器具等ではないもの」と定義されています。
具体的にいうと、吐き気その他の不快感、または口臭や体臭の防止、あせも、ただれ等の防止、脱毛の防止、育毛または除毛といった目的に対する有効成分が含有されている商品をさします。先ほどの問題の①と③は、この医薬部外品の中の「薬用化粧品」に分類されているもので、一般的な化粧品とは求める効果が違うため厳密に区別されています。
このように、化粧品とはどういうもので、どれが医薬部外品にあたるのかなどを定義しているのが薬事法という法律なのです。
薬事法とは何か
薬事法とは、医薬品等の製造や流通等について各種の規定を定め、安全性を確保するとともに保健衛生の向上を図ること目的として制定された法律です。昭和35年に制定されましたが、平成26年の法改正で「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と名称が変更されました。
薬事法が規定しているのは主に4つの分野で「医薬品」「医薬部外品」「医療機器及び再生医療等製品」に加え、「化粧品」もその対象になっています。化粧品に関して、薬事法はどのような規定を設けているのでしょうか。
具体的には3点あります。一つは「化粧品の製造販売が許可される事業者の要件規定」です。もう一つは「化粧品の成分表示に関するルール規定」です。さらに「化粧品の広告表示に関する規定」があります。それぞれ詳しく確認していきましょう。
化粧品を製造、販売するための条件は?
化粧品を製造、販売するためには2種類の許可が必要になります。それが「化粧品製造業許可」と「化粧品製造販売業許可」です。これらは薬事法の目的として定められている安全性の確保に基づくもので、「許可を受けたものでなければ、業として化粧品の製造や製造販売をしてはならない」という規定が根拠となっています。
化粧品製造業許可とは、文字通り化粧品を製造するための許可をいい厚生労働大臣の認可を受けるものです。許可を得るためには、責任技術者を置いて適切な保管場所を確保するなどの条件があります。化粧品製造業許可を取得すると、販売を目的とした化粧品を製造することができるようになりますが、市場に流通させるためにはこの資格だけでは十分ではありません。
化粧品製造販売業許可が必要になります。化粧品製造販売業許可とは、製造物責任の所在を明確にすることを目的の一つとして、市場に流通させた事業者への安全管理体制を充実させるために設けられた制度です。事業者には製造出荷から販売まで一貫して責任を持つことが求められます。
化粧品を製造するプロセスでの安全性確保が化粧品製造業許可で、流通プロセスでの安全性確保が化粧品製造販売業許可で、それぞれ担保されているといえるでしょう。
化粧品の成分表示に関するルールとは?
化粧品の成分表示に関するルールは、化粧品に配合されている成分について定められたものです。化粧品の成分については厚生労働省の定めた「化粧品基準」で使用が禁じられているもの以外は、基本的に企業の裁量に任せられていますが、薬事法では安全性の観点から、防腐剤、紫外線吸収剤、タール色素といった3種類の配合に関しては、政府のポジティブリストに記載されている成分に関してのみ許可しています。
一方で、この3種類以外の成分の配合については基本的に企業の自由を認めていますが、配合禁止成分や安全性に疑問があるとしてネガティブリストに掲載されている成分を配合することは禁じています。
化粧品を販売するときの広告表示、気をつけるべき点は?
化粧品は医薬品ではないことから、薬事法は化粧品に医薬的な効果効能をうたうことを禁じています。また「虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない」として、消費者を惑わせるような誇大表現も認めていません。
この点を考慮し忘れると薬事法違反として罰則や課徴金などがかせられる恐れもありますので、広告表現には細心の注意を払うことが必要です。具体的には厚生労働省が公表している「医薬品等適正広告基準」が参考になります。
ここでは化粧品について留意すべき点に言及されており、たとえば「頭皮、毛髪を清浄にする」「乾燥の気になる場所に」といった化粧品が効能として記してもよい例や、「シミ、たるみの改善」「目じりや口元の小じわがなくなります」などと化粧品の広告には使えない表現などが示されています。
ほかにも「肌の悩みを解決、トラブル解消!」「 愛用者も多数、自信を持ってお勧めします」など、誇大広告として禁止される表現などもまとめられているので参考になるでしょう。
化粧品を販売する際は薬事法に沿ったルールの順守を
化粧品は、使用者の安全を守るために定められた薬事法の適応商品です。化粧品を販売しようとすれば、化粧品製造業許可と化粧品製造販売業許可という2つの認可が必要になります。
また、成分の配合についても決まりがあり、消費者が戸惑うような誇大広告も禁止されています。このように、化粧品の販売には薬事法の規定が密接に関わってきますので、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。