アロマやヨガ、伝統的な中国医学やアーユルヴェーダなど、様々な民間療法がありますよね。中には、病気の予防や健康増進に役立つと謳うものも見かけます。友人や知人から勧められた経験がある方も多いのではないでしょうか?勧めてくる人には、確かな効果を感じて勧めている人もいるかもしれませんが、果たして周囲に勧めて良いものなのでしょうか?薬機法(旧薬事法)と照らし合わせて解説します。
薬機法(旧薬事法)とは?
薬機法(旧薬事法)とは、正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性を確保等に関する法律」といい、「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」「医療機器」「再生医療等製品」の運用について、様々な規制が定められています。
以前は「薬事法」と呼ばれていましたが、2014年に「薬事法」が改正され「薬機法」と呼ばれるようになりました。薬機法では、医薬品などの情報が正確に伝わるように広告に対して一定の規制が定められています。間違った情報で適切な医療を受けられなくなるケースも多く、広告を規制して医薬品や医療機器が適切に使用されるようにという目的もあります。
薬機法(旧薬事法)では、虚偽の広告や誇大広告が禁止されています。特に、がん等の特定の疾病用の医薬品に関しては、医療関係者以外の人への広告を制限して、がん等の医薬品が適正に使用されることを確保しています。
広告の規制は、製造や販売している個人や企業だけでなく「何人」も対象になっています。つまり、広告を請け負う個人や企業、記事などで発信する人や伝える人なども対象となります。また、医薬品として承認されていない医薬品の広告も禁止されています。
民間療法とは?
民間療法と言われるものには、瞑想やヨガ、アロマセラピー、アーユルヴェーダや中国医学など数多くの種類があります。「民間療法」という言葉は、補完代替療法や統合医療のひとつとも言われていますが明確な定義がありません。
一般的には、医師以外の人や自身の判断で病気の予防や改善、健康増進のために特定のものを使ったり行ったりすることを「民間療法」と言います。鍼や灸、マッサージは、医師が必要と判断した場合は保険診療で受診できるなど、民間療法と通常診療を判断する境目が難しいものもあります。
民間療法は病気の予防や治療に効果があるのか?
医薬品として認められていないものを、病気の予防や治療の効果があるように説明することや、販売したり広告として掲載したりすることは薬機法(旧薬事法)で禁止されています。
一方で、民間療法が病気の予防や治療効果があるとする書籍や研究が世界各地で発表されていることも事実です。その情報を信じて病気の予防や治療に取り入れてしまう方も少なくありません。
しかし、民間療法の研究にはエビデンスが少ないと専門家からの指摘もあるため、情報を鵜呑みにしてしまうのはリスクが大きいと言えます。子どもが火傷を負った時に、保護者が民間療法で効果があるとされる製品を使用して悪化してしまう場合があります。
保護者の自己責任のもとで使用したとしても、医師の診断を仰ぐ必要があったでしょう。がん治療においても、様々な民間療法の書籍や情報がありますが、がんそのものへの効果のエビデンスは少なく、所謂「標準治療」の代わりになるものはないと言われています。
がんを治療中に民間療法を行ったことによって、治療の効果が弱まったり副作用がでたりすることもあります。
ただし、民間療法は、がんそのものへの効果はなくても、心身の辛さを和らげる効果が期待されるものもあります。不安などからくるストレスを緩和するために、検討しても良いとされる療法も存在します。
医師と相談しながら使おう
民間療法を取り入れる際には、医師に相談しながら使用することが求められます。医師に相談しにくい場合は、看護師や医療スタッフに伝えるのも良いでしょう。民間療法は、通常の医療と比較すると予防や効果に対するエビデンスが少なく、さらに深い研究の必要性があると考えられます。
さらなる研究の必要性を踏まえ、自己判断で民間療法を取り入れるのは避けることが望ましいでしょう。ただし、日本でも保険診療として漢方薬の中にも認められているものがあったり、医師が民間療法を勧めたりしている場合もあります。
情報を見極めるのが難しいケースもありますが、ひとつの情報だけでなく多方面から情報を収集し十分検証してから冷静に判断する必要がありそうです。
情報を精査しよう
厚生労働省が公開している「eJIM(イージム)」という「統合医療」情報発信サイトがあります。このサイトでは、民間療法をはじめとする相補(補完)療法や代替療法などと向き合い利用していくための参考になる、エビデンスに基づいた情報を紹介しています。
情報を見極めるには、最新の情報で信頼できる人や団体が発信していることがポイントになります。情報を収集する時には、その情報が本当に必要なものなのかを考えた上で精査しましょう。民間療法の研究や効果について、周りの人に伝える時にも薬機法(旧薬事法)違反にならないようにすることが必要です。
治療効果を謳うものを、安易に治療中の人に勧めるのもいけません。また、民間療法で治療行為をすると医師法にも違反してしまうことになります。身近な人へ民間療法を伝える時も同様です。治療中の人へ民間療法を勧める時には、勧める前に情報の信頼度をしっかり確認しましょう。
もし、周りの人に伝えるとするなら、まずはエビデンスが少ないことや使用するリスク、安全性が確保されていないことを伝えることが重要です。
使用する際には、医師と相談する必要があることも忘れずに伝えましょう。民間療法の知識を伝える程度に留めるのが無難です。SNSなどのコミュニケーションツールは、シェアされるなどで拡散されてしまうものです。情報が広がってしまうと、誤った判断をしてしまう人がでてくる可能性もあります。
気軽に発信してしまいがちなSNSですが、拡散されることを前提に発信する内容には気をつけたいものです。
信頼できる情報を見極めよう
民間療法は古くから実践されてきたものもあり、様々な情報があります。ただし、薬機法(旧薬事法)で規制されているように、安易に病気の予防や治療の効果を周りに伝えては法律に違反することにもなります。周りに伝えたり発信したりする時には、信頼できる情報を収集し見極めることが大切ですね、伝える時は、薬機法(旧薬事法)に違反しないように注意しましょう。